エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 あなたに好かれたくてイタリア語を学んでいる、なんてとても言えそうにないから、どこへ行っていたかは言わないでおく。

 下心を軽蔑されるのも嫌だし、そんな真似をしても無駄だと否定されるのも、想像するだけでつらい。

 北斗はそんなことを言わないだろうと思うけれど、私と彼の関係は五年前と大きく変わっているのだ。

「すぐ夕飯作るね。ちょっと待ってて」

「いや、いい。俺がやる」

「あなたが?」

 リビングへ向かおうとした足が止まる。

 私の代わりに玄関の鍵を閉めてこちらにやってきた北斗が、長袖のシャツを軽くまくった。

 細い腕は男性らしく引き締まり、うっすらと血管が浮かんでいる。

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