エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 だが、ここで食い下がり続けるのも彼女に気を遣わせかねない。

 せっかく楽しそうにしているのに、この顔を曇らせるのだけは避けたかった。

「……そうか。なにかあればすぐ連絡してくれ。遠慮しなくていい」

「ありがとう」

 彼女は靴を履き終えると――これもいつもは履かないヒールだ――玄関のドアノブに手をかけた。

「ご飯、食べてていいからね。行ってきます」

「……ああ」

 理性を総動員して、彼女を引き留めないよう自分を押さえつける。

 純美が家を出て行き、目の前のドアが閉まってからもしばらくその場を動けなかった。

「結婚したくらいでは足りなかったのか……?」

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