エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 私はいつから、自然と笑えるようになっていたんだろう。

「……頑張ってみます。頑張りたいです」

 ふたりが大きくうなずく。

 もしも彼らのようにキスで過去が許されるなら、いくらでも口づけを贈ろうと思った。



 二十一時を過ぎた頃、私はロッコさんの運転する車で自宅まで送ってもらった。

 助手席で待つ百合先生に別れを告げ、車を降りる。

「純美、忘れ物」

 マンションのエントランスへ向かおうとすると、後ろから呼び止められる。

 足早に駆け寄ったロッコさんが、私にランチバッグを手渡した。

 忘れ物なんてした覚えがなかったから、不思議に思ってロッコさんを見上げる。

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