エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 背の高い男性が私たちの間に、失礼とは思わせないほど自然に割って入った。

 やけに鼓膜に染み入る、つやめいた魅力的な低い声。

 顔を確認するよりも早く、その声だけで心臓が大きく跳ねる。

 ……嘘。そんなはず、ない。

 反射的にうつむいてしまい、混乱と緊張で乱れた呼吸を必死に整えようとする。

 そうしている間に、突如として現れた彼が私の手に優しく触れた。

 触れられた場所がひどく熱くて、泣きそうになる。

 私は宝物を扱うように触れるこの指先を知っていた。

 ホテルスタッフとしては情けないどころか恥ずかしいことに、なにも言えないまま床を見つめて動けなくなる。

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