エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 私をそれとなく引き寄せた彼は、流れるように口づけしようとした男性に話しかけた。

 どこの国の言葉なのか、なんと言っているのか、そんなことを考えている余裕はない。

 だって私の前にいるのは、二度と会うはずがないと思っていた人だから。

「さて」

 馴染んだ日本語が聞こえ、いつの間にか彼だけになっていることに気づく。

 それでも私は、すぐに顔を上げられなかった。

「久し振りだな、純美(すみ)

 やっぱり、北斗だった。

 確信に満ちた言い方には、喜びも怒りも感じない。

「純美」

 私が黙っていたせいか、北斗はもう一度名前を囁いた。

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