エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
「ううん、行ってきて」

 きっと純粋に気遣ってくれているだけだと自分に言い聞かせ、今日出会った招待客に向けたものと同じ笑みを北斗にも向ける。

「お手洗いにも行きたかったの。ゆっくり話して平気だよ」

「……すぐ戻る」

 長い指が私の耳をくすぐって離れていく。

 そのぬくもりが遠ざかる不安を抱えながらも、顔には出さないようにして見送った。

 三人が席を外すと、私はひとりぼっちになった。

 右を見ても左を見ても知らない人ばかりで、孤独感に襲われる。

 北斗が隣にいてくれるだけでどれだけ安心していられたのかを強く実感した。

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