エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 暗い考えに侵食されていくのが嫌で、北斗にも話した通り化粧室へ行こうと席を立つ。

 だけど会場の出入り口に向かう途中、横から近づいてきた女性とぶつかってしまった。

「あっ……」

 運悪く、女性の持っていたグラスから赤ワインがこぼれる。

「す、すみません! 大丈夫ですか?」

 慌ててその場にしゃがみ、こぼれた場所を確認する。

 彼女のドレスにはかかっていないようだったけれど、私のラベンダー色のドレスには見事に赤い色が咲いていた。

「本当にすみません。ちゃんと前を見ていなかったせいで……」

 嫉妬と考え事に夢中だった自分を反省し、何度も頭を下げる。

「Tranquila」

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