エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす

 泣きたくなるが、この程度のトラブル、仕事なら日常茶飯事じゃないかと自分に言い聞かせて堪える。

 メインエントランスの床に子どもがジュースをぶちまけたこともあったし、外から飛び込んできた犬がシルクのクロスの上で粗相をした時だってあった。

 理不尽なクレーム処理も、コンシェルジュへの無理難題も数えきれないくらい対処してきたはずだ。

 だからこのくらいのことでうろたえるのは、私らしくない。

 ……そう思うのに、身体が動かなかった。

 すぐに戻ると言っていたのに、いまだ北斗が現れる気配はない。

 やっぱり私が想像した通り、恥をかかせるつもりだからじゃないだろうか?

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