エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 だってこんなに心細くて怖いのに一緒にいてくれないなんて……。

「……そんなわけ、ない」

 ドレスをぎゅっと掴み、妄想を頭から振り払おうとする。

 ひとまずこのドレスのまま会場にいるわけにはいかないと、いつの間にか震えていた足を踏み出して外へ出ようとした時だった。

「どうしたんだ、こんなところで」

 息を切らした北斗が駆け寄ってきて、心配そうに私を見つめる。

 その瞬間、いろいろなものが溢れて涙に変わった。

「ごめんなさい……」

 北斗が息を呑んでから、素早く視線を動かす。

 私のドレスが汚れていると気づいてからの動きは早かった。

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