エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
「そ、そうなんです。広場に行きたいんですが、どこへ行ってもここに戻ってきてしまって」

「迷いやすいからな」

 そう言うと、彼は私を軽く手招きした。

「おいで」

 海外で知らない人についていってはいけない――。

 友達にも言われ、初日のツアーでも注意されたため、躊躇する。

 警戒心を露わにしている私に気づいたのか、彼は困ったように微笑した。

「君のような子どもをどうこうするつもりはない。同じ日本人のよしみで手を貸そうと思っただけだ」

「子どもって。もう成人しています」

「え」

 彼の黒い瞳が驚きに見開かれる。

「てっきり高校生くらいかと」

「……二十二歳です」

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