エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
「仕方がない。俺の知っている君はドイツ語を話せなかった」

 彼のとろりとした黒い瞳に見つめられ、顔を上げなければよかったと後悔する。

 私を捉えたまま逸らそうとしない眼差しに、心まで捕まった気がした。

「まさかこんなところで出会えると思わなかったな。今はここに勤めているのか?」

「……恐れ入りますが、どなたかとお間違えではありませんか?」

 他人のままでいようとするのは卑怯かもしれない。

 でも、今さら彼の前でどんな顔をすればいいというのだろう?

 だけど北斗は私の言葉を聞いて軽く目を見開いた後、ふっと苦笑した。

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