エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
「君の過去に、一方的に婚約破棄して捨てた恋人はいなかったというわけか」

 鋭い言い方ではないのに、胸に突き刺さる。

 彼の視線を受け止められなくなって下を向くと、顎を掴まれた。

 上を向かされ、再び目を合わせさせられる。

 相変わらず、なんて危険な色気を漂わせた人なのだろう。

 もしも〝艶〟が人の姿を取るなら、きっと北斗のような人間になったはずだ。

 皮肉っぽい笑みが浮かんだ口もとに、つい目を向けてしまう。

 愛を囁き、震えるほど甘いぬくもりを与えてくれたやわらかな唇の感触を思い出して、自然と頬が熱くなった。

「離して、ください」

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