エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 逃げ出したくなる気持ちを堪え、毅然とした態度で彼に告げる。

「今はレセプションの最中です。……あなたもお仕事中では?」

 咎める私に対し、返ってきたのはくっという笑い声だった。

「だったら後で時間を作ってもらおう。ふたりで話したい」

 熱に浮かされたように少しかすれた声が、私の鼓膜をくすぐった。

 ふたりで――。

 甘美な響きに一瞬意識を奪われかけるも、すぐに気を取り直す。

「お話することはありません。失礼いたします」

 このまま彼の腕に囚われてしまいたい衝動を抑え込み、背を向けてその場から逃げ出す。

 北斗と再会してしまった。北斗に見つかってしまった。

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