エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 そう思っていたのに、シフトを終えて帰ろうとした私は、ホテルの従業員口を出てすぐ足を止めた。

 大通りに出る道の途中に、背の高い人影がたたずんでいる。

 その人物は遠目から見てもわかるほど足が長く、全体的にすらりとした印象だった。

 蔦模様の柵にもたれており、ジャケットのポケットに手を入れている。

 ときどき左手を軽く掲げて自分の前に持っていくのは、時間を確認しているからだろう。

 どくんどくんと心臓が音を立て、私の脳内に警鐘を鳴らす。

 あそこにいるのは、北斗だ。

 五年会っていないのに、影になった立ち姿だけで彼だとわかる。

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