エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 こわごわ目を開いて、百六十センチある私より三十センチ近く高い北斗を見上げる。

 たった今、私の恋心をよみがえらせた形のいい唇が言葉を形作った。

「答えてやる義理があるか? 君だって五年も俺に答えをくれなかった」

 責められて口をつぐむ。

 北斗は私の涙で濡れた指を動かすと、私の唇をそっとなぞった。

「もう俺から逃げられると思わないほうがいい」

 長い指が唇から首へ移り、肌を軽く引っかいて痕を残す。

 甘い痛みに胸が疼くのとほぼ同時にエレベーターのドアが開き、ふたりきりの時間の終わりと、新しい始まりを告げた。



 望まぬ再会から数日が経った。

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