エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 それがどうしたのかと言いたげな目で見られる。

「君が逃げないようにする意味もある」

 そう言うと、北斗は私の手を握った。

「もう逃げないのに」

「じゃあ、素直に手を繋ぎたいと言っておく」

 普段は遠回しな言い方を好むくせに、ときどき直球で自分の気持ちを伝えてくるのがこの人の憎いところだ。

「……もう私、三十歳近いんだよ」

「百歳のおばあさんだとしても、俺のやることは同じだ。君と手を繋ぎたい気持ちは一生変わらない」

 握られた手がひどく熱い気がして、彼ではなく自分の体温が上がったのだと気づく。

「外ならいいけど、お店の中では離してくれるよね?」

「君が離してくれるなら」

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