エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
「……愛している振りなんてしないでよ。本心じゃないくせに」

 私が文句を言っていい筋合いはないのに、彼の演技が残酷すぎて言わざるをえなかった。

 北斗は目を丸くすると、眉を下げてふっと笑った。

「嫌がってくれるならそれでいい。君が苦しめば苦しむほど、俺の五年間も癒やされる」

 行くぞ、と手を引かれてたたらを踏む。

 やっぱり私に対して嫌がらせをするために、わざと五年前以上の甘い接し方をしているのだ。

 好きな時に自分の欲を満たして、都合よく利用できる妻を手に入れるための結婚ではなかった。

 彼の本当の復讐は、失った時間を呼び起こして私を傷つけることだ。

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