エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 ……そうだとわかったからといって、私にはどうすることもできない。

 私は彼の愛のない囁きを喜ぶだろうし、触れられたら律儀に反応してしまう。

 二度と北斗の心が手に入らないのだと突きつけられるのは、これ以上ない苦痛だった。



 買い物を終えて帰宅すると、もうとっくに遅い時間だった。

 てっきりもう眠るだけかと思いきや、北斗に手招きされてソファに座る。

「そっちじゃないな」

 隣に座ると、北斗は首を横に振った。

「ここだ」

 とん、と北斗が自分の膝を指で叩く。

「膝の上に……座るの?」

「そうだ。背中を向けるなよ」

 そんな恥ずかしい真似、できるはずがない。

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