危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
倒れているのが自分の父と母だと気づくのに時間がかかった。
叔母に引きずられるようにその場から引き離され、そのあとの記憶は曖昧だった。パトカーのサイレンの音。怒号。自分が一体なにを見ているのか理解できない。
その日から数か月の記憶は全くなく、葬儀のことすら覚えていない。
都内で暮らす叔父夫婦の家で暮らすようになっても、心と体がバラバラになったような悪い夢の中にずっといるような気がした。
ただ覚えているのは、父が好きで選んだ街を離れる日のことだった。
がらんとした家を叔母に手を引かれ、出ていった。父の趣味で二階の柱にかけられたままのハンモックとか、母親の編みかけのマフラーだとかが目に入ってきて、自分が一人ぼっちになったのだと痛烈に実感した。