危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
「入って。そこじゃ冷えるでしょう」
少し迷ってから、すみれは自分の部屋にマナを通した。マナは一瞬驚いた顔をしたが、おずおずと立ち上がり、中へ入った。
達也と最後に電話した際、心身の調子が悪いから入院させているとちらっと聞いたが、スリッパで来たことを思うと、抜け出してきたのだろうか。
ソファに座らせ冷たい水を飲ませると少し落ち着いたようだった。
「今タクシーを呼ぶから。体を大事にして」
マナはお腹を抑えたまま、上目遣いにすみれを見た。
「優しいんですね。だから私は勝てないのかな。自分のことばっかりで、呆れられちゃって」
「勝ち負けじゃないでしょう。達也さんも立場上、私と結婚したほうが得だと判断しただけで本当の愛情があったわけじゃないわ」
妊婦を放っておくことができず、部屋にあげたものの、内心不安でいっぱいだった。
マナは精神的に不安定で、自分を脅迫してきた人間だ。どう考えても二人きりになるのはまずい。
タクシーを呼ぼうとスマートフォンを出すと、蓮から何度も着信があったことに気づく。
『なにかあったら連絡してほしい』
家を出た日に蓮に言われた言葉を思い出す。マナを部屋に残して、すみれは部屋を出ると蓮に電話をした。
「今どこだ」
すぐに電話に出た蓮が切羽詰まった声をしている。
「家なの。今ちょっと病人がいるの」
「吉田マナか?」
一発で言い当てられ、驚く。どうして知っているのだろう。