危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
 わかってはいたが、蓮は黙り込んだ。過去の話は蓮にとって地雷なのだ。だけど今夜の親しげな雰囲気ならいけるかもしれないと思ったけれど、勘違いだったようだ。
 自分の内面は晒したから、相手にもそうしてほしいなんて傲慢な考えはもっていないつもりだが、やはり少しだけ寂しくなる。

 こうして身を寄せ合っていても、彼のことをなんにも知らないのだ。
 いつか蓮の心に近づきたい。少しでいいから。

 言葉より、肌から伝わるものを信じていた。蓮がこれ以上ないほど大事にしてくれるのも。
 蓮のことを何も知らなかった。でも大丈夫。きっといつか話してくれる。そう信じている。

 蓮の口は重く、自分というものを一切語りたがらない。それでも蓮のことを疑うことはなかった。ちょっとした仕草や表情、口に出す言葉が、蓮の心の正しさとか清らかさを感じさせた。それは品性というべき類のものかもしれない。
 ただなんとなく過去にとても傷ついた経験があるのだろうということは、察した。
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