危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
「私は止めたの。過去なんていくら騒いだって変えられない。真犯人がいたとしても、それを証明することはきっとできないと思ったから。蓮には平穏な人生を歩ませてあげたかった」

『歩ませてあげたかった』

 麻美がそう言ったことに、はっきりとした嫌悪感を抱いた。
その言葉のもつ傲慢さにおそらくこの人が気づくことは永遠にあるまい。けれど、すみれにそんなことを言う資格はない。二人の間にはすみれの知らない歴史があって、家族としての絆もあるのだろう。

 父が本当に事件に関わっているのだろうか。多少強引なことをしたとしても、自分の社会的地位や政治生命には固執していた。損得勘定は得意な人間だ。

「人間にとって、一番苦しいのは相反する感情を持ち続けることだと私は思う」

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