危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
「ん……。ちょっと仕事がうまくいかなくって、残業してたの」

 目も合わせずにそう言うすみれを見て、嫌な予感がした。

「体調は?」
「大丈夫。少し冷えただけ」

 目線を下にやったまま、すみれが小さな声で言った。様子がおかしい。扉を開け、部屋に入る。鼻も目も赤い。やはり泣いていたのだと確信する。

「なにがあった?」

 答える代わりに、すみれは雨で濡れた体で蓮にしがみついてきた。抱きしめると、すみれが息もできないほどに激しく泣き始めた。
 不吉な予感に胸が重くなる。
 そもそも嘘偽りで固められた関係だ。何があったか問うべきなのはわかっていたが、無言のまますみれをきつく抱きしめた。
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