危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 ふと、駅からここまで来るタクシーの運転手が、私のパンプスと薄いコートを見てぎょっとした顔を思い出し、笑ってしまった。案の定足はずぶ濡れになり、膝から下は骨の芯まで冷え切っていた。着替えなんて勿論ないから、そのまま濡れたズボンを脱いでストーブで足を温めていた。

 ぐつぐつと鍋の煮える音がし始めた。大鍋で煮るとなぜかおいしく感じるのはなぜだろう。

「じいちゃんもあんたのことは死ぬまで心配してたよ」

 仏壇に祖父の写真が飾ってある。亡くなったのは五年前。電話で知ったけれど、父の意向でお葬式にも出なかった。逆らってでも行かなかった自分を今更ながら責めた。父に逆らっても来るべきだったと自分の薄情さを嫌悪した。
一体自分はどこで道を間違えたのだろう。
 
 窓を見ると、雪は先ほどよりずっと勢いを増していた。

 真っ白な世界に閉じ込められる新鮮さは、色々なことに傷ついた心を魅了した。こちらの都合などまるで無視して、疎ましく、美しく雪が積もっていく。
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