危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
延々と続く曇天だとか、肺まで凍らせそうな澄んだ冷たい空気は、不思議とくたびれた少女には心地よい。部屋の隅には、祖母が気まぐれに飼った蚕がおり、ただ繭の中で少しずつ姿を変えていく不格好な虫に自分を重ねた。
「できた。できた」
普段ならもう寝ているであろう祖母が、最後にせんべいを入れた汁をもってきてくれる。
視界が曇ったのは湯気だけのせいではないが、私は目をこすり、なるべく普通の顔をしてそれを頬張った。
熱い。また蓮と狭いこたつで食べたごはんなんかを思い出して辛くなる。
「雪かきとか一人で大変じゃない?」
「うん。大変だねぇ。近所もみんな年寄りだし。若い子はみんな出ていくから」
「私、手伝うから冬の間ここにいてもいい?」
「いいよ」
あっさりと承諾され、拍子抜けするとともに安心する。父のことで思うこともあるのだろうが、決して問い詰めないところが、祖母らしかった。
この世にまだ自分の居場所があった。助かった。
当然田舎町にも父のしたことは、知れわたっているはずだ。祖母もわかっていてなにも聞かない。賢くて優しい人だと思う。こういう人が今の自分には必要だった気がする。