危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる




 会社はやめて、翌春も祖母の家にいた。父からは連絡がない。どうしているのか、知る気もない。
 鈴木から回してもらう下請けの仕事で食いつないでいた。庭に野菜なんかを植えて、祖母と一緒に育てて食べたりしていた。
 周囲の好奇の目も、気になりはしない。
 失ったように見えるものは、形あるものだけで、本当に大切なものは心の中できれいなまま存在し続けている。

 ただ今はそれを絵を通して表現するだけだ。

 すみれが間借りしている部屋は、絵だらけになっていく。たまたま訪れた町内会の人が、すみれの絵を市報に載せてみたいと言った。
 宝来という姓は珍しい。すみれの父になにがあったかこの狭い町で知らない人はいないから、無論断った。
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