危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
「……」
「過去の清算というべきか、贖罪というべきか。今でも時々すみれを思い出す」
「贖罪?」
「すみれはずっと一人だよ。お前のためを思って嘘をついて身を引いた。いや……すみれ自身が罪の意識に耐えられなかったんだろう」
すみれ。その名を聞くだけで胸がえぐられるような痛みを感じる。
あの週刊誌の暴露のあと、すぐに宝来正道は収賄で逮捕された。同時にすみれは蓮に別れを告げ、いなくなった。蓮両親の殺害については、証拠不十分で立件はされなかった。
復讐などやめて、すみれに全てを打ち明け共に生きることを決意した直後、宝来正道が全てを失ったのは皮肉なことだ。
すみれは会社もやめ、その行方は杳として知れなかった。何度電話にしても出なかったし、そのうちスマートフォンも解約された。達也とよりを戻すという言葉をそのまま信じたわけではない。すみれは嘘が下手だから。
逮捕された宝来正道は、蓮のしたことを告発はしなかった。そんなことをすれば自分の過去を蒸し返され、損にしかならないからだろうと思っていた。
「宝来先生は自分に不利になっても、お前のことを告訴するつもりだった。でもすみれが止めたんだ」
「すみれが……」
「顔色が変わったな。すみれは気の毒だった。実家もあんなことになったし」