危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
もう会えなくても

 なにもない病室ですみれはただ天井を見つめていた。

窓の向こうに広がる公園の景色が見える。公園の木々にはまだ雪の粒が残っている。子供たちが元気に遊びまわる声が病室まで聞こえてきた。
病室の隣のベッドにいる老婦人は、付き合いが多いらしく、面会時間中はひっきりなしに誰かが来ておしゃべりをしていた。

「いつもうるさくてごめんなさいね」
「いいえ。静かだと色々考えちゃうから、ちょうどいいです。寂しくなくて」

 きっといい人生を送ってきたのだろう。人に恵まれているのは、いいことだ。
 
 孤独の中で、やりたいことをやりとげたので、もう悔いはない。
 途方もない長い時間をかけて完成させた絵本を祖母に託した。ただただ自分のためだけに描いたはずなのに、手術を前に心細くなったのか、自分になにかあったら蓮に渡してほしいなんて言ってしまった。
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