危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 ひとしきり泣いたあと、疲れてうとうとしていると、心地よい夢を見た。森を彷徨っている夢。世界は淡い光に満ちていて、柔らかな風が、花の香りを運んでくる。ひらひらと舞う蝶を追いかけて、あてもなく歩いていく。
 暖かくて優しい空気に包まれて、いつまでもこうしていたいと願った。

 明晰夢に、これは自分が描いていた世界なのだと気づく。

 なんて美しい世界。そして誰もいない。切なくて、悲しくなってしまう。
 やがて小さな足音に気づく。こちらへやってくる。

「すみれ」

 懐かしい声がして、ゆっくりと瞳を開けると、その人はまっすぐ立っていた。

 まだ夢を見ているのかと思った。それとも願望が見せる幻影か、なんてぼんやりした頭で冷静に分析する。いよいよ頭までおかしくなってしまったのかと思う。
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