危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
達也の祖父は、すみれの父の熱心な支援者で、そのせいか、達也も宝来先生と呼ぶ。
「結婚なんてそんなまさか。片桐さんに失礼だよ」
妙なことを言われ戸惑う。そんなはずがない。いつも事務的な態度でお互い接している。
話が妙な方向へ進み、口へ運ぶ料理を味わう余裕もない。
「父の手前、私に気を遣っているだけでしょう。本当は送迎なんて面倒だと思っているわ」
「いいや、そういうんじゃない。おとなしい振りをしているが、なんていうか獲物を狙う鷹みたいな。ああいうやつが一番危険なんだよ」
達也の言葉に驚いた。どちらかといえば、人には無関心なタイプに見えた。野心家には見えなかったが、政治家の秘書になるくらいだから、将来は父のような権力者になりたいのだろうか。
「……そうだとしたら、父に取り入りたい気持ちが強いだけで私そのものに興味があるわけじゃない」
「油断しないでほしい。よからぬ目的ですみれに近づきたい男はたくさんいる。これは片桐に限ったことじゃないが」
達也の言いたいことはわからないでもない。これまでも父の威光目当てですみれに近寄る男性はいた。そういうこともあって、なかなかまともな恋愛に踏み出すことはできなかった。だが、片桐に関してそれはないだろう。
──あの人は私になんて興味ない。