危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
「傘」
自分だけ入るわけにもいかず、一緒に入ろうとすると、片桐が代わりに持ってくれた。
「ごめんなさい。私が要領よく動けないから、あなたがいてよかった」
「俺にはあなたのほうが、迷子みたいに見えます」
よほど取り乱してしまったのだろうかと思うと恥ずかしくなる。
「あの子を見て、昔を思い出して……。私も3つの時に母が亡くなったから」
「……」
片桐はなにも言わなかった。すれ違う人にぶつかりそうになったのをかばうように、一瞬肩を抱き寄せられた。
「あの子、無事に帰れるかしら」
心細げな顔を見て、自分と重なってしまう。早く迎えがくればいい。
「ええ。きっと」