危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
 
 雨はすぐにどしゃ降りになった。
 蓮はすみれが少しでも濡れないように傘をこちらへやる。すみれも蓮が濡れないように距離を詰めた。傘くらいコンビニで買えばいいのに、少しくらいどこかで雨宿りをすればいいのに、そうしなかった。
 時々手や肩が触れあった。なぜかいけないことをしているような、やましいような、そんな気持ちになる。
 濃紺の傘の下には二人だけの秘密の香りがした。心臓の音は、幸い雨がかきけしてくれる。

 大して言葉も交わしていないのに、なぜだか全てを見透かされている気がする。

「スケッチブック、濡れてしまいましたね」
「いいの。捨てちゃっても。ただの落書きみたいなものだし」

 すみれは傘の中でそっと蓮を見上げた。
 男性にしては長い睫毛に雨粒が滴っていて、一瞬涙のように見えて息を呑む。
 鼓動が早くなる。どうしてかわからないけれど、心が乱れる。落ち着かない。

 それから車に乗って家に着くまで、一度も会話を交わさなかった。
 さきほどほんの少し触れた手が、熱い。


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