危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
悪意

 就業時間になっても、まだ仕事に没頭しているすみれに、同僚が声をかけてきた。
 10名ほどの事務所に残っているのは、すみれを入れて3人だけだった。

「今日も婚約者じゃない人とデートですか?」
「……え?」
「この前見かけましたよ。すごいイケメンと相合傘してるの」
「あれは、父の秘書で最近送迎をしてもらっているんです」
「宝来さん、お抱え運転手がいるの? すっごぉい」

 もう一人の同僚まで茶々を入れてきた。カッと頬が赤くなる。婚約パーティーですみれの陰口を叩いていた二人だった。しまったと思った時はもう遅い。二人は隠すことなくまっすぐに嘲笑という悪意をぶつけてくる。
 おだてている振りをしてすみれを馬鹿にしているのがわかる。

「へぇー。すごいなぁ。なんだか親密そうだったから、てっきり本命のカレかと思っちゃった。親から決められた結婚相手はいるけど、本命はあっち……みたいな」

 二人がくすくすと笑う。人を貶めて、上になったと思う人間は時々いる。だからといって、傷つかない程割り切って生きられない。

「違います。そういう関係ではありません」
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