危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
 
 細かい事情は言いたくなくて、適当にお茶を濁した。
 片桐とのことを好奇に満ちた目で見られていたと知り、気分が悪くなる。

 角が立たないように婚約パーティーにも招待したが、余計なことだったと後悔していた。
 通っていた小学校から高校までエレベーター式の学校では、富裕層の娘ばかりだったから、父が政治家だったり、裕福だったりしても特に珍しいわけではなかったけれど、一般的にはそうではないのだ。

『付き合う人間は選べ』

 幼い頃から、父がすみれに繰り返し与えた数少ない教訓の一つだった。父の価値観はすみれとは相いれるものではないが、この言葉は胸に留めておこうと改めて思った。
心にシャッターを下ろし、少しでも心を守る。
 
「いいなぁ~。社長令息だか御曹司だか、私らには想像もつかない世界だわ。コンペも勝ち取るし、宝来さんの人生に苦労なんてなさそう」
「今度から宝来さんが出すコンペは、私諦めます。圧倒的な才能に勝てないもの」

 その言い方には、はっきりとした毒があった。こういったことに慣れるのは難しい。いちいち傷つく必要がないとしても。
 彼女らはすみれを憎んでいる。ひしひしと悪意を感じながら会話を続けていると、胸がきりきりと痛み出す。
達也の家が裕福なこともおそらくは原因なのだろう。
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