危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 返す言葉もない。ボロボロになった自尊心を抱え、ますます落ち込む。
 宝来すみれという人間の自我なぞいっそないほうがマシな気がする。
 自分らしくありたいなどという欲求そのものが苦しみの元でしかない。

「もう動き出してる案件だからあなたの一存でどうこうできる段階じゃないのよ。そんなことで悩むなら、作業に没頭するほうがよほど建設的よ」

 その言葉はすみれを慰めはしなかった。自分の中の甘さと向き合わざるをえない。
 なにを言ってもまだ社会経験も浅く実績のないすみれに説得力はないのだ。

 ──頑張るしかない。デザインに正解なんてないんだから。

 翌日は朝から少し体調が悪かったが、精神的なものだろうと、仕事に集中した。

 一つ一つ小さな実績を積み上げて信頼を獲得していくしかない。

 もともと名前が出ないはずの仕事に、デザイナーとしてすみれの名前が載った時はショックだった。自分の後ろにある宝来の名を欲していたのかと思うと、自分など名前さえあれば替わりのきく存在だと思い知らされる。
 だからこそ鈴木に甘えだと言われてから、寝る時間も惜しんで夜も努力していた。
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