危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 幼い頃に母を亡くし、兄弟もいないすみれは、空想の世界に浸ることが多かった。
 やがて絵を描く喜びを知り、自分の思い浮かぶ世界を描くようになった。
 それは、すみれの孤独な心を守る砦でもあった。

 生来内気な性格で、友人関係も狭いほうだ。不器用な性格も災いして誤解されることが多い。そんなすみれに自由をくれるのが絵だった。

 在学中、父に「絵の仕事をしてもよい」と言われたが、それは固辞した。自立できないとつまりは父の庇護の下生きていくことになる。それだけは避けたかった。
 絵で食べるほど才能があるわけでもないし、好きなことをストレートに仕事にしたくなかった。
 
 敢えて大手を選ばず、小さなデザイン事務所に就職したのも、父の影響が及ばないところで自分の足で立ってみたいと思ったからだ。だが、それは甘い考えだった。

 自立さえすれば、窮屈な思いをしなくて済む。そんなふうに思ったこともあるが、結局宝来正道の娘という立場からは逃れられそうにない。
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