危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 事務的な連絡が、仕事用のスマートフォンに入る。
 すみれを脅迫している人間の目星はついていて、婚約者の上條達也が数年前から関係していた女が、別れを切り出されておかしくなったのだと、すみれの父から聞いた。なんでも妊娠までしているという。
 将来の娘の夫の不貞を淡々と語る姿に深い嫌悪を覚える。

 達也も達也だが、知っていて嫁がせようとする父親も相当だ。

 すみれは、片桐から見てもあまり強い人間ではなかった。それを知ったらどうなるか。知ったところで、宝来正道は、金の生る木である上條家との蜜月の関係をやめる気はないようだ。
 
 宝来正道は、脅迫状の主について「おそらく実際危害を加えることはないが、選挙前に妙なスキャンダルを起こされても困る」とどこまでも自分本位な考えで、すみれの警護を蓮に命じた。

 本人が不必要だと言ったからと言って、一人にするわけにはいかない。
 すみれの職場の前で待機していたが、深夜になっても出てこない。見に行くとエントランスの扉の前で倒れているのを発見した。
 慌てて揺さぶると、意識がなかった。顔も真っ白だ。
 子供の頃は病弱だったと聞いたことがあるが、どこか悪いのだろうか。
 すみれを抱き上げ、エントランスにあるソファに一時的に寝かせる。その細さと軽さに驚く。救急車を待っている間は異常に長く感じた。


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