危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 真っ白なブランコの上に乗っている夢を見た。まだ一人で漕ぐのもおぼつかないから、母が隣で手を添えているのが見えた。母は優しく微笑んでいるのはわかるけれど、よく見るとその顔は曇っていた。
 急に不安になったすみれを残して、母は去っていく。 

「待って」

 追いかけようと、ブランコを転がり落ちて、駆け寄ろうとするが、足がもつれて走れない。そうこうするうちに、母はどんどん小さく見えなくなっていく。

目が覚めると、病院のベッドと点滴の管とスタンドが見えた。
悪い夢を見ていた。じっとりと背中に汗をかいている。喉がカラカラで痛んだ。
正直母のことはあまり覚えていない。ただ思い出の中は優しく美しいままだった。3歳の時に病気で急逝してしまったから、当然といえば当然だが、その喪失だけはしっかりとすみれの心に傷を残した。

 ぼんやりとした頭で、どうしてここにいるのか思い出そうとする。

「事務所で具合が悪くなって……どうしたんだっけ」
 
 自分で病院まで来た記憶はない。一体誰が連れてきてくれたのだろう。

「目が覚めましたか」
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