危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 その言葉はすみれにぐさりと突き刺さった。そんな話をすみれがいないところでしていたとは。

「大丈夫だよ。そんなことで結婚をやめたりしない。俺はすみれがいればいい。体調が落ち着いたら結婚指輪を選ぼう。すみれがデザインしてもいいし。考えておいてよ」
「ジュエリーはデザインしたことがないから、難しいよ」
「できるよ。こんなのが欲しいって描いて渡せば作れるさ」

 そのあとも色々慰めの言葉を言われたが、頭に入らなかった。
 結局仕事の合間に来てくれたらしく、すぐに達也は帰った。

 ──卑屈にならずにいなくちゃ。

 達也も今はよくてもあとから子供が欲しくなる可能性だってある。
 幸い、結婚まではまだ1年あるから、達也も少し考えたほうがいいのかもしれないと思った。自分が母を早くに亡くしたから、自分の子にはそんな思いを絶対にさせたくなかった。だからこそ、自分はたとえ可能でも子供は産まないほうがいいと思い始めている。

 ぼんやりと病院の天井を見ていると、涙で滲んできた。テレビをつけたりして気を紛らわそうとするが、頭に入らない。 
 ベッドの脇に置いたままの片桐の本が目に入る。

 ──続き、読もうかな。

 パラパラとページをめくる。始めは現実のあれこれに気がいって集中するのに時間がかかったが、いつのまにか物語の中に入り込むように夢中になっていた。

< 66 / 284 >

この作品をシェア

pagetop