危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

「物語の最後は?」
「決めてない」

 嘘だった。本当は、ぼんやりとは決めている。少女は再び一人になる。そして、いつか大人になった時、思い出すのだ。
 あんなふうにきらきらしたものを追いかけた思い出の美しさを。

「もしも」

 なにかを決意するように、片桐が言った。次の言葉を待つ。

「最後が決まったら教えてほしい」

 どうしてそんなことを片桐が言ったのかは、わからないけれど、すみれはいつか彼の問いに自分の納得のいく誠実な答えを出そうと、そう決めた。

 
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