危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる

 父親とて一代で大臣まで上り詰め、次期総理と噂されるほどの人物だ。普通の価値観であるとは思っていない。だが、すみれの幸せくらいは願ってくれていると思っていた。
 だから達也の言葉で、もはや自分には逃げ場などなく、味方もいないのだと知った。

「すみれ……。そんな泣きそうな顔しないでおくれ。子供のことはどうにもできないけど、彼女とはもう会わないよ。小さい頃から医者になるためだけに教育されてきて、本当の自分がわからなくなる。時々自分でもどうしようもない衝動に襲われるんだ。すみれが一番大切な事実は変わらない」

 頭がくらくらしてくる。なにを言っているんだろう。いや、少しだけわかる。家に縛られ、自分をなくしてしまう気持ちだけは。わかるけれど、受け入れられない。
 これは、きっと自分で考えてこなかった代償だ。

「さようなら」
「待てよ」

 二度と会いたくない。

「下らない嫌がらせは、これからもきっとあるよ。すみれも俺も、生まれながらに普通の人間とは違うんだ。だからどうか下らない戯言に惑わされないでほしい。大事なのは未来だろう」

 抱きすくめられ、身をすくめた。まるで知らない人にされたように恐怖を感じる。

「離して」
「駄目だ。帰さない。二人きりで話したい」

 目がいつもと違う。見たことのない達也の様子に怖くなる。
 
 結局家まで送ると強引に車に乗せられた。家の前にはたまたま父のところへ来ていたらしい片桐がいた。

「すみれ。次会った時にちゃんと話そう」

 無視して部屋の中へ入る。
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