危険な略奪愛 お嬢様は復讐者の手に堕ちる
雨の日に車に置き忘れたスケッチブックだった。プライベートで描く絵は人に見せたい類のものではない。恥ずかしさもあるけれど、嫌な気はしなかった。
「昔は、絵本作家になりたかったんだけど、それじゃ家から自立できないと思って」
「いつか、続きを描いたら見てみたい」
ゆっくりと落ちていく陽を受けて、二人は静かに見つめ合った。
──どうしよう。嬉しい。
ただの社交辞令かもしれない。でも、すみれだけが大切にしてきた小さな箱庭の世界を片桐がもっと見たいと言ってくれた。
大げさかもしれないがそれだけで世界が一気に開けたような、そんな気すらした。
さっきまで落ち込んでいたことなど忘れてしまいそうだ。
同時に自分でも不思議だった。先ほどまでの荒れた心が片桐の一言で穏やかになっていくことに。