「みんなで幸せになると良いよ。」
変な間が気まずくさせた。
若い母親は正門をくぐることもなく、ただ校舎を眺めていた。

ほどなくヒイラギは正門から出てきた。


『お待たせ。今度卒業生で集まるから来いって教授に言ってきた。行こうか。』


「うん…。」


『知り合い?』


若い母親の後ろ姿を見ているとヒイラギも振り返った。


「いや…ごめん、ちょっと待ってて。すぐ終わるから。」


母親と僕達は声が聞こえる距離に居た。


「あの、迷惑かもしれないですけど学校に用があるなら案内しますよ?」


『いえ、本当に結構ですから。』


本当に申し訳なさそうに断ると立ち去ろうと歩きだした。
手を引いていた小さい子供が僕に興味をもったらしく茶色のジーンズのスネを引っ張った。


『啓!やめなさい!すいません。』


怒られた子供はしゅんとなっても僕を見つめていた。
< 102 / 266 >

この作品をシェア

pagetop