「みんなで幸せになると良いよ。」
受付で「女性医師を希望します」の上に○をつけ、

「女性医師は1時間ほどかかりますけどよろしいですか?」

その問いに対して『はい。』と答えて、安っぽいソファに腰掛けた。
母親と話すことはなく待合室に張られた「乳がんの早期発見」「保険証が変わります」そんな張り紙を読んでいた。

理解せず、文字だけ目で追うようにして。

産婦人科なんてはじめてで緊張したけど不思議と逃げ出したいような恥ずかしさはなかったわ。女性医師を待てばいいことだし、それに診察される前からお腹の中に新しい生命が宿っていることを感じてたの。理屈とかじゃ説明できないんだけど、自分のなかで生命同士が強く繋がっている…そんな感覚ね。
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