「みんなで幸せになると良いよ。」
頼りないプラスチック製の椅子に腰掛けた。
ドカッと置かれた荷物は僕らの境界線になり、
彼女はそのうえに顔を沈めた。
薄い布の袋は結構詰まっている。


「何をこんなに一杯もってきたん?僕なんかこれだけやで。」


黒とディティールだけオレンジのショルダーバッグ。


『君と違ってレディは荷物がいるのよ。』


「水着とタオルくらいやろ?多すぎやで、絶対。」


ダメージジーンズ。

その右ポケットには小銭、
左ポケットには樋口一葉と野口英世が何人か。

後ろポケットは指定席の携帯とタバコが既に陣取っている。
細々したアイテムを全部だしてバッグに詰め込んだって
彼女ほどの荷物にはならない。
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