「みんなで幸せになると良いよ。」
左腰を強打したみたいだ。折れてはないにしろ、酷い打撲だ。


「ゴリラみたいな怪力やん。身長も…」


一瞬で彼女の顔は険しくなり、バスケットボールのピボットするみたいに来るっと半回転した。華奢な体は裸を見てみたくなるほど力強かった。


『…よかったね、か弱い女の子が相手で。』


ヒイラギの左の拳は僕の背中で寸止めのままになっている。


「よかった、可愛い女の子が相手で…。」


皮肉混じりの一言。


『…もっかい言う勇気ある?』


妙に落ち着いた声に不安を覚える。


「ない…かもしれん。」


寸止めにしてあった拳を背中にぶつけた。


「痛っ!ごめん…ってば。」


彼女はファイティングポーズを解除した。


また少しヒイラギを知った。



いや、正しくは

また少し『ヒイラギはわからない』と知った。
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