その推し、死なせません~悪役令嬢に転生した私、ループを繰り返しラスボスを救う~
 少し目元が和らいだステイシアの視線が紙安を映す。
 それは強気なようでいて、頼るべきか迷うような不安定さで揺れているようにも思えた。そんな彼女に紙安はしっかりした答えを返せない。
 こんな自分に、自信なんてないのだ。

「……もう時間だ。それじゃ、うまくやって」

 ステイシアはその顔を見て小さく吹き出すと、ここから追い払うように手を外側に振る。

「あ、あのっ……! もし、うまくいったら、私たちどうなるんですか?」
「ああ、任せときなさい。あんたを身体から追い出すような事はしない。っていうか、やり方もわかんないしね」

 きょとんとして答えるステイシアに、紙安は重要な疑問を尋ねた。

「そうじゃなくて……あなたは、自分の身体に戻れるんですか?」

 リューグは彼女を誰よりも大切に思っている。
 もしそれが失われでもしたら、きっとその悲しみは他の誰にも埋められない。
< 57 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop