茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
百子は美咲に感謝を告げて、血相を変えた陽翔に抱き寄せられながら彼の車の助手席に収まる。走行中は他愛もない話をしていたが、彼女の表情は浮かないものだった。陽翔はそれを見てため息をつきたかったが何とかこらえる。
(百子……本当にどうしたんだ)
電話口で聞いた百子の声は、まるで心臓を鷲掴みにされてそのまま握りつぶされるような悲惨なものだったからだ。しかも後半は謝罪しか口にしなかったことも気にかかる。明らかに百子は陽翔の言葉を受け付けていなかったからだ。彼女は陽翔が自分の妹と歩いていたことにショックを受けたというよりは、それがきっかけで過去の嫌な記憶が蓋を開けただけに過ぎないと考えていた。となれば思い当たるのはあのことしかない。
(まだ元彼からの仕打ちが癒えてないのか)
そう推測した陽翔は車を降りて百子の手を引いて玄関に入るや否や、彼女をその場で抱きしめた。百子の陽翔のシャツを引っ張る手が小刻みに震えており、漏れ出る彼女のか細い声が陽翔の胸を引っ掻く。それでも嗚咽を漏らそうとしない百子に陽翔は訳もなく悲しくなった。彼女は陽翔の胸を押し返すと感謝の言葉を述べて靴を脱ぎ、ふらふらとリビングへと向かい、ソファーに座る。どうやら今から話をしてくれるらしい。そうでなければ無理矢理聞き出していたところだった。これ以上百子が傷つくのを見たくなかったからである。陽翔が隣に腰掛けるのを見て、百子は頭を下げた。
「ありがとう、陽翔……わたし……陽翔に酷いことを……」
「別にいい。そんなに百子が苦しんでるとは思わなかったし……何があったか詳しく聞かせてくれるか? その前にお茶でも淹れて……」
「やだ、離れないで」
百子は立ち上がろうとする陽翔の腕を掴み、ふるふると首を横に振る。掴んでいるというよりは、縋りついているのに近いかもしれない。彼女の叫びの代弁のようなその動作に、彼はどうしても表情を曇らせた。陽翔は百子の手をそっと握り、彼女の肩を優しく抱いた。彼の体温に浮かされるように、百子は元彼の浮気相手が会社の後輩だったこと、彼女から言われたことをそのまま伝えたが、陽翔が急に彼女の握る手に力を込めてしまい言葉を止めた。
「この恥知らずめ! あいつ自分が何をしたのかが分かってんのか! 裏切りに加担して人を平気でこき下ろした挙句、応援すると抜かすなんて訳分かんねえ! 頭沸いてんのか! 浮気をしでかす奴は揃いも揃ってろくでなしで吐き気がする! どうやったらそんな思考になるか、一度頭をかち割って覗いてみたいもんだ!」
(百子……本当にどうしたんだ)
電話口で聞いた百子の声は、まるで心臓を鷲掴みにされてそのまま握りつぶされるような悲惨なものだったからだ。しかも後半は謝罪しか口にしなかったことも気にかかる。明らかに百子は陽翔の言葉を受け付けていなかったからだ。彼女は陽翔が自分の妹と歩いていたことにショックを受けたというよりは、それがきっかけで過去の嫌な記憶が蓋を開けただけに過ぎないと考えていた。となれば思い当たるのはあのことしかない。
(まだ元彼からの仕打ちが癒えてないのか)
そう推測した陽翔は車を降りて百子の手を引いて玄関に入るや否や、彼女をその場で抱きしめた。百子の陽翔のシャツを引っ張る手が小刻みに震えており、漏れ出る彼女のか細い声が陽翔の胸を引っ掻く。それでも嗚咽を漏らそうとしない百子に陽翔は訳もなく悲しくなった。彼女は陽翔の胸を押し返すと感謝の言葉を述べて靴を脱ぎ、ふらふらとリビングへと向かい、ソファーに座る。どうやら今から話をしてくれるらしい。そうでなければ無理矢理聞き出していたところだった。これ以上百子が傷つくのを見たくなかったからである。陽翔が隣に腰掛けるのを見て、百子は頭を下げた。
「ありがとう、陽翔……わたし……陽翔に酷いことを……」
「別にいい。そんなに百子が苦しんでるとは思わなかったし……何があったか詳しく聞かせてくれるか? その前にお茶でも淹れて……」
「やだ、離れないで」
百子は立ち上がろうとする陽翔の腕を掴み、ふるふると首を横に振る。掴んでいるというよりは、縋りついているのに近いかもしれない。彼女の叫びの代弁のようなその動作に、彼はどうしても表情を曇らせた。陽翔は百子の手をそっと握り、彼女の肩を優しく抱いた。彼の体温に浮かされるように、百子は元彼の浮気相手が会社の後輩だったこと、彼女から言われたことをそのまま伝えたが、陽翔が急に彼女の握る手に力を込めてしまい言葉を止めた。
「この恥知らずめ! あいつ自分が何をしたのかが分かってんのか! 裏切りに加担して人を平気でこき下ろした挙句、応援すると抜かすなんて訳分かんねえ! 頭沸いてんのか! 浮気をしでかす奴は揃いも揃ってろくでなしで吐き気がする! どうやったらそんな思考になるか、一度頭をかち割って覗いてみたいもんだ!」