茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
陽翔は上司に事情を説明し、すぐさま搬送先の病院へと向かう。百子の代わりに電話を掛けてくれた救急隊員の声が頭の中でループ再生され、走って駅に向かう間も、電車を待っている間も、電車に乗っている間も、はやる気持ちを抑えることが不可能になっていた。
(百子、どうか無事でいてくれ……!)
救急隊員によると、彼女は熱中症になりかけた女児を助けるために道路に出て、車からその子を庇い、歩道の縁石に頭をぶつけて出血し、意識不明になったそうだ。傷は小さいが出血は酷く、そして意識は戻っておらず、搬送先の病院にて手術をして精密検査を受けることになっている。
女児の方は、救急車で体を冷やし、経口補水液を飲む処置を受けて回復しており、念の為搬送先の病院で検査を受けることになっているとのことで、陽翔は少しだけ胸の支えが取れた。百子が身を挺して守った相手が助からなかったら、意識を取り戻した百子はきっと泣くだろうと思ったからである。
(こうなるんだったら、今朝百子にあんな態度を取るんじゃなかった……! くそっ!)
陽翔は拳をつくり、自分の膝を目一杯殴る。乗客の視線が集まるがお構いなしだ。昼食後にメッセージが来て、その場で返さなかったことや、カッとなって百子に怒りをぶつけてしまったことを、本当の意味で悔やんだ。そして女児を庇って負傷した彼女に対して、自責の念が後から後から押し寄せた。
(何であの時俺は勝手にしろって言ったんだ! そんなことを言ったから百子は……!)
彼女の人柄は、嫌というほど陽翔が分かっている。自分のことを脇に追いやり、目の前の人間を助ける優しい性格の持ち主だ。彼女のことだから、きっと陽翔が今朝怒ったとしても、そうでなくても、それに関係なく困っている人間を助けてしまうのだろう。それを悪いとは思わないが、それがきっかけで彼女が怪我はもちろん、意識不明なのは受け入れ難かった。
(百子が目覚めたらまずは謝ろう。その後はゆっくり話をして、何を悩んでいたかをちゃんと聞こう)
搬送先の病院の最寄り駅に着いた陽翔は、日没後だというのに、暑さの名残の残る道を、ネクタイを緩め、シャツのボタンを3つほど外しながら全力疾走する。暑さと汗が全身の皮膚に纏わり付き、息も苦しくなるが、焦りで我を忘れている陽翔にとってはそよ風に等しい。病院が見えても陽翔は速度を緩めず、夜間の出入り口を蹴破る勢いで開け、息せき切って百子の婚約者であることを受付の人間に明かし、待合室で既に待っていた百子の母の千鶴と、処置室から医師が出て、説明を受けるのをひたすら待っていた。
(百子、どうか無事でいてくれ……!)
救急隊員によると、彼女は熱中症になりかけた女児を助けるために道路に出て、車からその子を庇い、歩道の縁石に頭をぶつけて出血し、意識不明になったそうだ。傷は小さいが出血は酷く、そして意識は戻っておらず、搬送先の病院にて手術をして精密検査を受けることになっている。
女児の方は、救急車で体を冷やし、経口補水液を飲む処置を受けて回復しており、念の為搬送先の病院で検査を受けることになっているとのことで、陽翔は少しだけ胸の支えが取れた。百子が身を挺して守った相手が助からなかったら、意識を取り戻した百子はきっと泣くだろうと思ったからである。
(こうなるんだったら、今朝百子にあんな態度を取るんじゃなかった……! くそっ!)
陽翔は拳をつくり、自分の膝を目一杯殴る。乗客の視線が集まるがお構いなしだ。昼食後にメッセージが来て、その場で返さなかったことや、カッとなって百子に怒りをぶつけてしまったことを、本当の意味で悔やんだ。そして女児を庇って負傷した彼女に対して、自責の念が後から後から押し寄せた。
(何であの時俺は勝手にしろって言ったんだ! そんなことを言ったから百子は……!)
彼女の人柄は、嫌というほど陽翔が分かっている。自分のことを脇に追いやり、目の前の人間を助ける優しい性格の持ち主だ。彼女のことだから、きっと陽翔が今朝怒ったとしても、そうでなくても、それに関係なく困っている人間を助けてしまうのだろう。それを悪いとは思わないが、それがきっかけで彼女が怪我はもちろん、意識不明なのは受け入れ難かった。
(百子が目覚めたらまずは謝ろう。その後はゆっくり話をして、何を悩んでいたかをちゃんと聞こう)
搬送先の病院の最寄り駅に着いた陽翔は、日没後だというのに、暑さの名残の残る道を、ネクタイを緩め、シャツのボタンを3つほど外しながら全力疾走する。暑さと汗が全身の皮膚に纏わり付き、息も苦しくなるが、焦りで我を忘れている陽翔にとってはそよ風に等しい。病院が見えても陽翔は速度を緩めず、夜間の出入り口を蹴破る勢いで開け、息せき切って百子の婚約者であることを受付の人間に明かし、待合室で既に待っていた百子の母の千鶴と、処置室から医師が出て、説明を受けるのをひたすら待っていた。