茨の蕾は綻び溢れる〜クールな同期はいばら姫を離さない〜
(百子が助けた……? このご婦人を……? そんなはずは……いや、待てよ……?)
陽翔は目をぱちくりさせていたが、少し考えて、納得したように頷いた。
「もしかしてひったくりに遭われてた……?」
「ええ、そうです。茨城さんは本当に勇敢で……私の荷物も無事でしたし、私の怪我の応急処置もして下さいました。助けて貰った後に連絡先を聞こうと思ったのですが、仕事があると仰って、聞けずじまいで……でも茨城さんが入院してると聞きましたので、この機会にお礼申し上げたかったのです」
そして彼女は持っていた紙袋を陽翔に差し出す。有名な和菓子屋さんの袋を見て、陽翔は思わず口元に笑みを浮かべる。百子は和菓子も好きだからだ。
「そうだったんですか……何だか百子らしいですね。百子も喜んでいると思いますよ。自分の誕生日に、自分が救った方から感謝されるんですから。しかも百子の好きな和菓子となれば、起きてたら小躍りの一つくらいはしそうです」
章枝は目を見開き、ベットの側にしゃがむと百子の手をそっと握った。
「百子さん、今日がお誕生日だったんですね。お誕生日おめでとうございます。素敵な一年になりますように」
章枝の落ち着いた声に、美香の溌剌とした声が続いた。
「おねえさんおめでとう! だからプレゼントがおいてあるのね」
百子の枕元にある箱と百子の顔を交互に見て、美香は悲しげに百子に問いかけた。
「おねえさん、おきないの……? おきないとごはんたべられないよ? おにいさんからのプレゼントもみられないよ?」
「……うん。そうなんだ……何度呼んでも起きなくて……ひょっとしたら目覚めたくないのかも……」
「そんなことないよ! おにいさん、おねえさんがだいすきなんでしょ? けっこんしたいんでしょ? だったらあきらめちゃだめなの!」
鼻息を荒くしてのたまう彼女に、陽翔は呆気に取られて瞬きを増やす。同じようなことを職場の人間に言われても定型文句にしか受け取れなかったにも関わらず、美香の言葉だけは陽翔を元気づけた。
「……そう、だね。ありがとう……百子とは喧嘩することもあるけど、誰よりも大事にしたいし、笑ってる所もたくさん見たい……愛してるんだ。愛してるから……愛してるからこそ、僕が諦めたら、百子が余計に悲しむよね……」
白い病室にしばし沈黙が降りる。百子への愛を囁きながら、彼女の左手をそっと握る陽翔の様子に、二人は暫し見惚れていたが、弾かれたように美香は陽翔の方を向いた。
「そうだ! ミカがおきてほしいっておまじないするの!」
美香はそう言って、手提げから白い折り紙を取り出し、慣れた手つきで何やら折り始めた。それはみるみる花の形を取り、花をあまり知らない陽翔でもその正体を言い当てることができた。
「できた!」
美香は手のひらに、折ったばかりの白薔薇を乗せると、ニコニコとしてそれを百子の右手に握らせる。薔薇を持って眠る百子の様子を見て、陽翔はその光景に既視感を覚えた。
陽翔は目をぱちくりさせていたが、少し考えて、納得したように頷いた。
「もしかしてひったくりに遭われてた……?」
「ええ、そうです。茨城さんは本当に勇敢で……私の荷物も無事でしたし、私の怪我の応急処置もして下さいました。助けて貰った後に連絡先を聞こうと思ったのですが、仕事があると仰って、聞けずじまいで……でも茨城さんが入院してると聞きましたので、この機会にお礼申し上げたかったのです」
そして彼女は持っていた紙袋を陽翔に差し出す。有名な和菓子屋さんの袋を見て、陽翔は思わず口元に笑みを浮かべる。百子は和菓子も好きだからだ。
「そうだったんですか……何だか百子らしいですね。百子も喜んでいると思いますよ。自分の誕生日に、自分が救った方から感謝されるんですから。しかも百子の好きな和菓子となれば、起きてたら小躍りの一つくらいはしそうです」
章枝は目を見開き、ベットの側にしゃがむと百子の手をそっと握った。
「百子さん、今日がお誕生日だったんですね。お誕生日おめでとうございます。素敵な一年になりますように」
章枝の落ち着いた声に、美香の溌剌とした声が続いた。
「おねえさんおめでとう! だからプレゼントがおいてあるのね」
百子の枕元にある箱と百子の顔を交互に見て、美香は悲しげに百子に問いかけた。
「おねえさん、おきないの……? おきないとごはんたべられないよ? おにいさんからのプレゼントもみられないよ?」
「……うん。そうなんだ……何度呼んでも起きなくて……ひょっとしたら目覚めたくないのかも……」
「そんなことないよ! おにいさん、おねえさんがだいすきなんでしょ? けっこんしたいんでしょ? だったらあきらめちゃだめなの!」
鼻息を荒くしてのたまう彼女に、陽翔は呆気に取られて瞬きを増やす。同じようなことを職場の人間に言われても定型文句にしか受け取れなかったにも関わらず、美香の言葉だけは陽翔を元気づけた。
「……そう、だね。ありがとう……百子とは喧嘩することもあるけど、誰よりも大事にしたいし、笑ってる所もたくさん見たい……愛してるんだ。愛してるから……愛してるからこそ、僕が諦めたら、百子が余計に悲しむよね……」
白い病室にしばし沈黙が降りる。百子への愛を囁きながら、彼女の左手をそっと握る陽翔の様子に、二人は暫し見惚れていたが、弾かれたように美香は陽翔の方を向いた。
「そうだ! ミカがおきてほしいっておまじないするの!」
美香はそう言って、手提げから白い折り紙を取り出し、慣れた手つきで何やら折り始めた。それはみるみる花の形を取り、花をあまり知らない陽翔でもその正体を言い当てることができた。
「できた!」
美香は手のひらに、折ったばかりの白薔薇を乗せると、ニコニコとしてそれを百子の右手に握らせる。薔薇を持って眠る百子の様子を見て、陽翔はその光景に既視感を覚えた。